土づくり
一粒は、空を飛ぶ鳥のために
一粒は、地の中の虫のために
残りの一粒は、人間のために─。
これは「三粒に種」という農業のことわざです。
農薬や化学肥料を大量に使った、鳥や虫が生きられない環境の中で、本当に美味しくて安全な作物を作ることは出来ません。
せっかく育てた農産物を鳥や虫たちに食べられてしまうのは少々困りますが、鳥や虫は害虫を食べ、花粉を運び、糞や死骸はやがて土に還ります。
自然環境・生態系の循環という観点から考えると、鳥や虫一つひとつの存在にもすべて役割があるのです。
私たちひいらぎ農園は、この「三粒に種」の教えをかみしめて、自然に寄り添った昔ながらの農法に取り組んでいます。
作っているのは作物ではなく「土」
ひいらぎ農園のお米や野菜は、よく「甘いね」と言われます。
栽培方法について聞かれることも多いのですが、実は特別なことはしていません。
ただ、できるだけ自然本来の環境に近づけることを意識して、作物がたっぷりと栄養を吸収してくれる土づくりに取り組んでいます。農薬や化学肥料に頼らず、手植え、手作業での収穫、除草作業…。非効率でも、手間を惜しむことなく。
当園はその昔、記録的な長雨が引き起こした土石流に飲み込まれ、田畑や家屋などが流される被害にあいました。
大きな重機が通らず、人力による土砂や流木の除去作業だったため、どうしても完全に土砂を取り除くことが出来なかったのです。
しかし、この山から流されてきた土砂には豊富なミネラルと、さまざまな微生物を含んでいました。
土石流で削り取られた山も今では草木が生い茂り、そこには地形を利用してつくった果樹園や畑が点在しています。すべては、自然がもたらした土の恵みのおかげなのです。
当園は、この自然が作り出す肥沃な土を活かせるよう、真面目に土づくりに取り組んでいます。自分たちが自然に生かされていることに感謝しつつ─。