郷土の伝統の継承
実は、ひいらぎ農園にはもう一つ、隠れたテーマがあります。
それは「受け継ぐこと」です。
どんなに便利な世の中になっても、変えないといけないものと「変えてはいけないもの」「守り、受け継がないといけないもの」があると考えます。
もちろん、自然の環境もそのうちの一つですが、ひいらぎ農園は文化や伝統、先人たちの思いなども、できるだけ守り、受け継ぎたいと思っています。
全国ブランド「レザーリーフファン」
ひいらぎ農園は山口県防府市の農村地帯、大道地区にあります。
ここ、大道地区は観賞用シダ「レザーリーフファン」の全国三大産地の一つ。
ですが、地元の人も含めて産地であることはほとんど知られていません…。
レザーリーフファンとはその名の通り、レザー(革)のようにつやつやと光沢のあるシダで、バラや洋ランなど高級花やアレンジ花に添えられる他、結婚式の高砂の席や祭壇の装花などに使われています。
防府産のレザーファンは「防府グリーン」の愛称で親しまれ、品質の良さ、日持ちの良さから花卉業界でも重宝されているのですが、その生産者のほとんどは高齢者で、近年は深刻な後継者不足が懸念されています。
地域ブランドを守り続けていくには、若手の生産者を増やしていくことが急務となっています。
伝統神事「笑い講」
ここ、防府市大道地区には鎌倉時代から続く神事が受け継がれています。
「笑い講(わらいこう)」と呼ばれる全国でも珍しい笑いの神事で、今年の豊作を感謝し、来年の豊作を祈願しながら、榊を手に「ワーハッハッハッ」と三回ほど笑い飛ばす年忘れの奇祭です。
神事には昔から世襲により引き継がれてきた21戸の議員たちが参加するのですが、当園はその議員の一戸でもあります。
当園からはまだまだ現役のじぃじが参加していますが、いずれは私が引き継ぎ、伝統神事を守っていかなくてはなりません。
※前列一番左のこの人が、当園のじぃじです
代々受け継がれてきた農地
長年、じぃじ、ばぁば(祖父母)が田畑や山野を守ってきましたが、やはり年には勝てず、体力面・健康面から農場規模を縮小していかざるを得ない状況でした。
ある時、いつも元気なばぁばが突然難病を発症、家族をとりまく環境が大きく変わりました。家族が何度も集まり今後のことを話し合う中で、私はじぃじ、ばぁばの元に移住し、農場を継ぐことを決意します。
地元の農業大学校に通いながら、じぃじ、ばぁばの農作業をサポートする日々が始まりました。
同時に、全国ブランドであるレザーリーフファンの深刻な後継者不足の話を聞いて、レザーリーフファン農家になることをも決心します。生産者の方々の熱心な指導と関係機関のサポートを受けながら、長い実地研修のプログラムを修了し、このほど地元JAのレザーリーフファン部会に入会。
2021年春、ひいらぎ農園を立ち上げました。